皆川博子さんの作品は好きで何冊か読んでいるのですが、ヨーロッパを舞台にしたものを読むことが多く、日本を舞台にした時代小説を読むのは『倒立する塔の殺人』から2冊目です。短編では『』と『少女外道』を読んでいますが。
しかも、発表の古いものは手に入りにくくあまり読むことが出来ずにいるので、読んだ作品の中で最も古いかな?という感じです。

この作品は昭和61年に新潮社で発表されており、わたしが手にとったのは平成元年に刊行された文庫版です。
舞台は江戸末期から明治初期、主人公は遊女屋の娘の「ゆう」という少女で、花魁の華やかさとゆうの寂寥感がまるでフルカラーとモノクロのように描かれていきます。
遊女屋の正月の準備の華やかさが細かく描かれたとおもえば、浄念河岸に売られた女の恐ろしい様子が描かれたりする。
そしてゆうは旅役者の福之助に恋をし、次第に舞台は遊郭から旅芝居へと移っていきます。

1年ほど前、この本を古書で買い(現在は絶版になっていて新しいものは手に入らない)、読み始めたものの…。
歴史物が苦手である上にあまりに古風な言い回しや漢字の読みに悪戦苦闘して疲れてしまい、数十ページだけ読んで、家に眠っていました。
ここに来て積み本やら読みかけの本を崩そうとまず手にとったのがこの作品でした。

最初100ページほどはやはり苦労していましたが、次第に漢字の読みなどにも慣れ、主人公に感情移入出来るだけの余裕が生まれると、夢中になりました。
慌ただしい江戸から明治へ移り変わる時代に、ひたすら寂寥感を抱いていきている少女の様子は、時代は全く違うながらもわたしが少女の頃に抱いていたものと変わらないな…と感じました。

この作品に登場する田之助という役者の生涯を追った『花闇』という作品と、恋紅の続編である『散りしきる花―恋紅 第2部』というのが存在するらしいのだが、どうも読める気がしないので読むとするなら大分未来ののことになるだろうと思います。
ただ、どちらも絶版のようなので、読みたい時に手に入るかどうかはわからないなぁ。

いずれにせよ、現在も結構頻繁に新しい作品を発表されている作家さんなので、全部読むのは途方も無いことです。
久しぶりにどっぷりと文学に浸って、読む時間は長くかかってしまいましたが、良い時間と経験を得る事が出来ました。