嵐が丘(上) (岩波文庫)
嵐が丘(上) (岩波文庫)
  • 発売元: 岩波書店
  • 価格: ¥ 588
  • 発売日: 2004/02/19
  • 売上ランキング: 16103
  • おすすめ度 4.5

1847年に発表されたイギリスを舞台にした恋愛小説。
読んでいて感じた『どうしようもない閉鎖感』は著者があまり外交的に表に出ず、想像の世界を飛び回りすごしていたことを思わせるような作品だなと思った。
エミリーは30歳で亡くなっており、若くしてこんなもの凄い話をこんなに全て計算されたように書いていることにびっくりした。

カンタンに言っちゃえば、古典ヨーロッパ『家政婦は見た』的な感じ。
あと、前半は登場人物の人間関係に戸惑った(親子で同じ名前だったり、いとこで結婚していたりする)。
それから、ヒースクリフという人物は本当に最後のシーンまでは恐ろしく、心を持たない人だと感じた。実際にキャサリンをさらって来るシーンあたりはとても怖い…。
しかし、読了後に色々考えると、ヒースクリフは生涯かけて一人の女性を愛し、また取り憑かれ続けたのではないか…と感じる。
寧ろ、語り手である家政婦のネリーこそ、なんだか冷淡で怖く思えてくるので不思議。

有名な古典文学なだけあって、色々な出版社から出ていて、まず、どこのものを購入するかで悩んだ。
最終的に手に入りやすそうな新潮か岩波のものか…と悩んでいた時に、AMAZONのレビューを読んでいたら『新潮のものは誤訳がひどい』と具体的な例を挙げて書かれていたので(私は具体例を見ても英語は全然わからないけど、「No, Mr Lockwood」を「こらこら」(使用人が主人に向かって)というのはさすがに私でもおかしいのがわかる…)、私は岩波の新訳(2004年)をチョイス。
岩波のほうも『訳文に情熱が感じられない』というレビューがあったけれど、他の訳文を読んでないので判らないのと、それが返って私にとっては『ネリーという人物が実はかなり冷淡なのではないか』と感じさせたのかもしれない。(ちなみにAMAZONで批判的なレビューをしているのは両出版社とも同じ人。他色々感想を見てみたところによると要は好みの問題らしい)

読み始めは判りにくいな…と思い、積み本になっていたものの、その間に何冊か読書をしていたおかげか、一般書籍に慣れた…のかどうかは判らないけど、積み本になる前の印象とはガラリと変わって読みやすく感じて、またここまで作品の世界に陶酔したものは今までであまり無かった。

読了後は『エヴァの最終回を見た時』と似てるような…(・・;)
作者がどんな人物でどんな環境で過ごしたのか知りたいし、登場人物の謎も解き明かしたい気分になる。様々な批評本が出ているらしいので、それにも手を出したくなる…。