さよなら妖精 (創元推理文庫)

発売元: 東京創元社
価格: ¥ 780
発売日: 2006/06/10

 久々に新しく読了。繰り返し読んでるものはたくさんあるのですが、新たなストーリーを読もうと思うとなかなか腰を据えて読むことができずにいました。
 この本は、同じ著者のシリーズを読み終えたあとに、次に読む本としてブックカバーに入れてそのまま読まないでいました。私は大体前の本を読み終える前に次に読む本を決めていて、何年も使っているブックカバーに差し替えていく方法で読んでいます。

 と、前置きはこのくらいで。
 この『さよなら妖精』は、<古典部>シリーズの『氷菓』と『愚者のエンドロール』が発表された後、出版社を変えて、2004年に東京創元社より単行本で発表された、それの文庫版です。

 話の時代背景は1991年から1992年。主に初夏。
 最初、読み始めた時に『なぜこんな時代チョイスなのだ?』と思いましたが、雨の日に出会う日本人でないマーヤという少女が登場することで意味がわかります。マーヤはユーゴスラヴィアから日本に来ました。1991年はユーゴ紛争の年に当たります。

 主人公の守谷や他の登場人物は高校3年。
 彼らがマーヤに出会い、そして彼女と日々を共にし、彼女が疑問を抱く日本の文化や歴史などを教えていく合間に起こる日常の謎を中心に序盤ストーリーは展開します。

 感想ですが。
 読後感の悪さ(スライム状のものが喉の粘膜に引っかかっているような)は、他作品でも全体的にそんな感じで見受けられたので、まぁそうなんだろうなぁと思ってましたが、今回もやはりという感じでした。
 しかし、話の序盤からぐいぐい引きこまれて、最後まで飽きる部分がほぼ無く読了させられる本はあまり出会わないので感動しきりです。

 登場人物の描写がラノベ的だという感想も見ましたが、古典部や小市民にくらべたら、よほど一般書籍っぽいと思います。というか、こういうジャンル分けもよくわからないのですが…。ほどほどの重みと軽さを併せ持っている感じで、私個人はちょうどいい感じです。

 とにかく、ちょっと読んでみて欲しいと思う作品でありました。
 ミステリというよりは青春小説といった雰囲気で、高校3年生の初夏の甘酸っぱくてほろ苦い気持ちを少しだけ思い出せたり、羨んだり出来る作品でした。