発売元: カンゼン
価格: ¥ 1,449
発売日: 2009/04/15
人間は他者を通じてしか自分を知ることが出来ない。悲劇ではないか。
三部作。全部読み終えることが出来ました。
最初の頃は、ごく普通の女学生。
それが、高校に行って、運動に夢中になる中で、心臓の病気のために挫折を味わうこととなる。
その後、日本史に興味を持ち、京都、立命の地へ。
3冊目は、最後の半年間の日記。
彼女は、宿を替え生活費は自分で捻出しようとアルバイトを始める。
職場のごく間近でそれを見る。
そして、彼女はバリゲードに入り、「機動隊、帰れ!」と叫び始める…。
次第に、デモに参加する回数も減り、内にこもってくる。
完全に独りだと思う。
そこで、手記は終わっている。
3日後に、彼女は貨物列車に飛び込み、亡くなったのだった。
1969年6月25日。
「70年安保粉砕」を叫んだ、独りの女性の人生が、終わりを告げたのだ。
倉橋由美子の「聖少女」(新潮文庫)に出てくる青年たちは確か、アンポの時戦い敗れたのだったなぁと思い、ぱらぱらとそんな記述を探してみる。
そう、確かアンポに反対していた人間は、その後渡米することを許されなかった。そんな内容だ。
小説や、手記を通して、当時の日本の様子をなんとなく思い描けるようになってきた。
皆川博子の「倒立する塔の殺人」(ミステリーYA!)には戦後、二ヶ月余りで「すばらしき民主主義」というように日本は変わっていったと書いてある。
しかし、そのように周りに順応できなかった人たちがいた。
だから、マルクス主義を掲げ、学生たちは戦った。
あの時、戦い抜いた若者たちは、今の世の中をどう思っているだろう?沖縄は日本に復帰をしました。
でも、米軍基地は今でも日本の各所にあります。
私は社会主義(マルクス主義)には反対だが、彼らが戦った気持ちも少しは理解できるような気がする。
民主主義の世の中は、働かなければ食べていけない。人生のほぼすべてを生きるために費やしているのだ。
なんのために生きるのか?生きるために身を粉にして働き、やっとの生活をし、大半の人はそうやって一生を終えてゆく。
やりたくない仕事でも、何か欲しいものを買うために。楽しいことをするために人は働いている。
私は、その心の切り替えは、まだ、出来ない。
こうして、ニートが生まれるのだ。
民主主義では、ニートはただ、朽ちていくだけだ。失格者の烙印を押されて。
だから、世界は難しい。
悦子さんはアンポの前年に命を絶っている。
それが、正しいことだったのか、間違ったことだったのかは、私には判断できるはずがない。
また、子を持つ親がこの手記を読むと、見方が180度変わり、別のものとして読めるだろう。
もしも、私が子を授かり、親になったら、そのときに再読してみようと思う。
その時の私は、どんな感想を抱くだろうか。