著者 : 米澤穂信
新潮社
発売日 : 2014-03-20

米澤穂信さんの短篇集『満願』やっと読み終わりました。
発売してまもなく買ったので、3月末……それからずっと寝かせていました。
一本目の夜警だけは確かすぐに読んで、その後は図書館の本を優先してたらこんなことに…あぁぁ。

米澤さんの作品は、古典部シリーズとか小市民シリーズは気楽に読めるんだけど、他の作品は割と時間がかかります。
というのも、どれもこれも中盤で怖くなっちゃうんですよね。だってどう考えたって結末が悲しい方に向かう予感がしてしまうんだもの。

今回は前途の通り「夜警」だけ読んで何ヶ月も積んでいて、今週になって他は読みました。

「夜警」
警官のもので、銃マニアの警察官やら出てきますが、警察官モノは、BL作品を色々読んでいるせいかそっちの印象で読んでしまってました。というか、具体的に崎谷はるひさんの白鷺シリーズを思い出してしまい…なんでだ? と思っているうちに読了。
「死人宿」
2年前に職場のパワハラで姿を消した元恋人の佐和子に会いに田舎の宿へ行った男。その宿は人が死にに来ることで有名な宿だった。そんな時、温泉の脱衣所に遺書の置き忘れを見つけた佐和子が、元恋人を改めて試すという内容。一番探偵物っぽい作品でしたが、結末があまりにも……。そう来る? って感じ。
「柘榴」
女心が描かれていますが、なんかちょっとなあと思ってしまいました。恋愛対象が被った時に、男は女に悪意が向かい、女はライバルの女に向かうとよく聞きますが……実際はどうなんでしょう? 私だったら……確実に自分に悪意が向いてしまうので共感はしなかったです(私が特殊か?)。
「万灯」
バングラデシュで資源開発の仕事に従事する男。現地の少数民族との諍いやある男を追って日本に久しぶりに帰国した時のあれこれ。
すごく怖かった。怖いんだけど、だからこそ読まずにいられない…という状態になった。当時のサラリーマンは、状況によってはそこまでするかもな…などと、命を削るように働いていた父を思い出したりもした。
「関守」
小説新潮に掲載された時のものを、昨年の夏に図書館で読んだ(文芸誌や小説誌のたぐいは高いので基本的に気になるのだけ図書館で読む)。その時の感想が以下。


オチはわかっているので、伏線を拾うような感じで再読しました。山間にたまに見かける感じの古いドライブインという感じで、懐かしさもあるのにこれ…。
一人ひとり、当時の詳細を事細かに記憶しているおばあさんがまず嫌だ。
「満願」
満願成就の後ろ向きの達磨。掛け軸。
殺人の刑期を終えて出所する女。その女の弁護士だった男は、かつて女の家で下宿をしていたことがあった。
裁判の時の様子と、下宿をしていた時の様子と、今が入り乱れてくる。
この短篇集のなかで一番好き。畳屋の跡継ぎで、最終的には肝硬変で死んだ女の夫、重治は妻に何を見ていたのか。