たまにじっくり時間をかけて読みたくなる皆川作品。
今回もゆっくりじっくり味わいました。

こちらは、芝居をモチーフにした幻想小説7篇の短篇集。
タイトルでもある「薔薇忌」では、狭い部屋に人を閉じ込め、天井から薔薇の葩を降らせて窒息させる刑というのが出てきて、印象に残りました。
こちらの短編、出だしは小劇場の本番が終わったところから始まっているので、私にとってはとても身近な世界観。
ほとんど関係者も捌けた劇場での会話から、話は過去へと向かう。

他の作品も歌舞伎だったり歌手だったりして時代は多少前後しつつ、語り手も色々とかわりながらも、どれもこれも華やかでありながら腐敗したような、鮮やかな世界観のストーリーでした。
発表年は80年代後半から90年といったところ。
私の感覚的には、生まれてはいるけれど子供だったせいでイマイチ現実味が薄くて、どれも夢みたいに読めました。

ちなみに解説によると、最初の刊行は1990年6月(実業之日本社)。次に1993年11月に文庫化(集英社文庫)に続く2度目の文庫化なのだそうな。