発売元: 新潮社
価格: ¥ 1,785
発売日: 2009/11/27
おすすめ度
日本で訳本が出ている中では最新作。
マキューアンの『初夜』を読了しました。
タイトルからして想像するのは、新婚旅行に出かけた先で迎えた初夜の、ハプニングもありつつも結局は甘ったるい話…かと思いきや。
いやはや…。
私は彼女、フローレンスの気持ちが少し(いや、かなり)わかる。
私もフローレンスのように、性交渉に嫌悪感を抱く人間である。
本文中に書かれていたように、妥協してここまでは許したら、今度は更につぎの難題が待ち構えるのである。
本来なら、二人で楽しみながら超えてゆくものだと思うが、フローレンスにも、私にも次はこんなことがしたいという欲求が湧いてこないのだ。でも、相手を愛していないわけでは決して無いのだ。
強く愛しているが、それでも受け入れられない罪悪感と辛さが、とてもよくわかる。
私は、作中とは生きている時代が違うから、そういう気持ちを伝えることができるし、まして、こうやって公にすることもできる。
でも、彼女の時代ではそんなこと、考えもつかないことなのだ。
なんだか、果てしなく悲しい思いが湧き上がってきて、なんともいえない気持ちである…。
自分の気持ちをその場その場で話すことができていたら…もう少しあとの時代だったならば、二人でゆっくり解決していこうと考えることもできたのだろうと思うととても残念に思う。
マキューアン作品は、やはり性描写の気持ち悪さが強くて、読んでいてそれだけでたのしい。
なので、ここから先は下世話に感想を……。
ひとつめ。エドワードは、この日のために1週間自慰を禁じている。ねぇ、男性ってみんなそうなの?そういうものなの??
だから余計にあんなことになっちゃったんじゃないの!?…とか言っても後の祭りだけど。
ふたつめ。毛の表現が変態的過ぎる。
彼女の下着からはみ出た1本の縮毛とか、彼の鼻の穴から1本だけ飛び出た毛とか。
上記2点を読むだけでも、マキューアンだー…と読んでいて幸せになれる(笑)
そんな描写とは相対的に、エドワードの家に向かって3時間もの道のりを歩いてきたフローレンスの可愛らしさ、その場面の美しさや、フローレンスの家で聞いたモーツアルトのハフナーの荘厳さが際立つ。
本文中には出てこなかった、フローレンスと父親の関係も気になる。