愛の続き (新潮文庫)
愛の続き (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 発売日: 2005/09
  • 売上ランキング: 124344
  • おすすめ度 4.0
─親愛なるジョー、ぼくは幸せが電流のように体を駈けめぐるのを感じています。
ジョー、いつかはぼくを許してくれますか?

 イアン・マキューアンは1948年、英国ハンプシャー生まれ。
 98年度に『アムステルダム』でブッカー賞を受賞したがその前作。
 そして、これもブッカー賞にノミネートされていたとのこと。

 日本では確か、アムステルダムのほうが先に邦訳出版されている。

 …そんなわけで、マキューアンの出版順に倣って私も『愛の続き』から読むことにした。
 表紙は、青空に赤い大きな気球と、それにぶら下がってる人が印象的。最初、キレイなタイトルと表紙だなと思ったが、読んでみたらとんでもなかった。

 科学ジャーナリストの主人公ジョーは、恋人のクラリッサとピクニックの途中、気球の事故に遭遇する。
 そこで出会ったパリーに執拗につきまとわれ、ジョーとクラリッサの関係や、ジョー自身も崩壊を始める…。

 そんな内容のもので、パリーは日本で言うストーカー(ド・クレランボー症候群と書かれている)で、家の前での待ち伏せ、つきまとい、気持ちの悪い手紙…を行っている。
 中盤に1章まるごとパリーの手紙の内容で占められている部分があるが、それがとにかく気持ちが悪い(贖罪で、ロビーが間違えて渡してしまった卑猥な内容の手紙と同じくらい気持ちが悪い…)。
 パリーがジョーに送る愛情は、そもそもはジョーがパリーに向けたものだと思い込んでおり、その他ジョーがパリーにそっけない態度を取るのもまた全て愛情の裏返しであり『合図』だと思い込むらしい。

 男性の同性愛、ストーカー、中年…。
 ここまで揃うと、なんだか加齢臭が漂ってきそうな勢いだ。硬くなったパンに酸化したバターを塗って食べてるみたいな感じ。

 また途中、ローガンの妻が亡くなった夫に対して、亡くなった事実よりも、その時に別の女性と一緒にいたという見栄が原因で死んだんじゃないか…と、疑り病んでいる様子が描かれている部分がある。
 愛に溺れた女性って(というか、男女問わずなのか?)、こういうことって結構あるんじゃないかと思う。

 歪んだ愛情がひとつの束になってこちらに襲い掛かってくるような感じ。
 気持ち悪い…(褒め言葉。